ラットプルダウンのやり方について書きます。ラットプルダウンに限らず、背中のトレーニングは全般的にどこを鍛えているのかよく分からないといった声を聞くことが多いですが、これを読んでモヤモヤがクリアになってくれれば嬉しいです。
まず、ラットプルダウンのやり方の前に、この種目が何を目的にしたのものかについて説明します。
● ラットプルダウンのターゲット
ターゲットは広背筋です。広背筋は上腕骨上部の肩の近くから付着して、扇状に広がる筋肉です。どのようなフォームで行うかにもよりますが、通常は上半身を立てた姿勢で動作する関係上、背中の中・上部にある他の筋肉 (菱形筋、僧帽筋など) は適切にヒットさせることができず、主要なターゲットからは外れます。
ということで、背中には色々と筋肉がありますが、ラットプルダウンではターゲットである広背筋の働きを考えて行うことになります。ちなみにラットとは、英語で広背筋という意味です。
- 広背筋の絵と説明
http://en.wikipedia.org/wiki/Latissimus_dorsi_muscle
http://www.exrx.net/Muscles/LatissimusDorsi.html
● 広背筋の働き
・肩関節の伸展 (Shoulder Extension)
上腕を前から下に降ろす動きです。アンダーグリップやV字ハンドルのクロースグリップのプルダウンではこの動きをします。
- 肩関節の伸展の例
http://www.exrx.net/Articulations/Shoul ... chor103519
・肩関節の内転 (Shoulder Adduction)
上腕を横から締めていく動きです。ワイドグリップのプルダウンではこの動きをします。
- 肩関節の内転の例
http://www.exrx.net/Articulations/Shoul ... chor104396
以下、いくつかの代表的なフォームについて、やり方や気を付ける点について説明します。
● ラットプルダウンのやり方
アンダーグリップ、クロースグリップ、それとワイドグリップの3つについて説明します。どのフォームでもそうですが、少なくとも最初のうちは適切なフォームを身に付けるため、あまり重い重量は使わない方がよいと思います。その代わりに、ボトムで引き切ったときに少し止めます。広背筋を最大限に収縮して最大限に負荷が掛かっているところで耐えることで、セット中適切なフォームをキープできていることを確認しながら行うことができます。
(1) アンダーグリップ
スタートポジションから「肩関節の伸展」で肩と上腕を下げていくことで広背筋を稼働させます。フィニッシュで、上背部をややアーチさせて胸を持ち上げるような意識を持つと、広背筋を適切に収縮させやすいです。
<アンダーグリップのプルダウンでよくある間違い>
・肩と上腕をロウのように後ろに引いてしまう
正しくは肩と上腕は下に下げていきます。後ろに引いてしまうと負荷が上腕に行っってしまったり、肩が下がらずに広背筋よりも上の方に行ってしまったりして、色々なところに負荷が分散して広背筋を感じることができなくなります。コツとしては、グリップには極力意識を置かないようにして、肘を動作のガイドとして使うようにすると上手くできるようになることが多いです。
・フィニッシュで上背部や胸が丸まってしまう
ラットプルダウンでは背中を丸めた方がラクなので、セットの後半疲れてきたり、重すぎる重量で無理してやったりするとこうなってしまいがちですが、背中を丸めると広背筋をきちんと収縮することができません。ラットプルダウンをやっていて、もし腹筋も使っていると感じたら、背中が丸まってケーブルクランチみたいになってしまっているということです。その場合、フィニッシュで胸を上に張れる重量まで軽くした方が良いです。
(2) V字ハンドルのクロースグリップ
やり方はアンダーグリップと同じなのでそちらを参照してください。
グリップが狭いので少々窮屈になりますが、アンダーグリップよりも手首の向きは自然でラクになります。また、アンダーグリップでロウのように後ろに引いてしまうクセがある人は、こちらのグリップの方が適切な軌道に修正しやすいことが多いです。
(3) ワイドグリップ
スタートポジションから「肩関節の内転」で肩と上腕を横から締めるように下げていくことで広背筋を稼働させます。バーを降ろす位置でフロントとビハインドネックの2つのバリエーションがありますが、どちらでやってもOKです。ビハインドは少々窮屈になるので最初はフロントから覚えると良いと思います。
コツとしては、上手く広背筋を感じることができない場合は、やはりグリップには意識がいかないよう、肘をガイドにして引くと上手くいくことが多いです。中指と薬指だけでバーを握るというのもグリップの意識を排除するのに効果的です。
横の動きになるぶん、それほど背中のアーチや胸のリフトにはこだわらなくても広背筋にヒットできるように思います。このため上半身は真っ直ぐでもOKですが、少なくとも背中は丸めないようにします。
ちなみに、私は上記3つのフォームでラットプルダウンをするときは、だいたい40 - 60kgの重量で行っています。ボトムで収縮したところで止めを入れるのが難しくなるので、これより重くすることはあまりありません。
● もう一つのラットプルダウンのやり方
上記のフォームとは別に、ロウ系の種目のように、「これ一つで背中全体を鍛える」やり方もあります。やり方としては、ワイドグリップでバーを握り、背中を倒し気味にして引き、フィニッシュで肩甲骨も寄せて、背中の内側も動員するようにして行います。初動をやりやすくするため、スタートで少し体重を乗せて勢いを付けてOKですが、ただ体をバッタンバッタンさせるだけにならないよう、初動を超えたらしっかり背中を使って引くようにします。
私は腰に問題があってベントロウなどで高重量を使うのがしんどいことや、当時私が行っていたジムにこれにぴったりなプルダウンマシンがあったことから、昔は背中のメイン種目として良くやっていました。今でもトレーニングを短時間で終わらせたいときなどはこのフォームで行うことがあります。